あっぱれコイズミ公式ブログ「タイのタイ冒険」

タイ在住の吉本興業の芸人・あっぱれコイズミと申します!このブログにはタイ情報や旅行記やタイでの生活の事を綴ります!

【後編】タイで象使いになる方法

前回の続きです。前回の記事はこちらです↓

 

タイで象使いになる方法【前編】 - 【タイ住みます芸人】あっぱれコイズミの野良猫の走馬灯

 

 


象に乗ったはいいものの、先生に渡された説明書は全てタイ文字で書かれていて、まったく読めません!

 


しかも、遊んでもらってると思いテンションが上がったスーちゃんに砂を鼻から吹きかけられ、目潰しをされました。文字は読めないわ、目は見えなくなるわで完全に詰みました。

 


視界が奪われ、どうしていいかわからずテンパっていたら、先生とスタッフさん達の笑い声が聞こえてきました。私がこの時点で象使いマスターだったなら、スーちゃんに「アイツらを殺れ!!」と指示していたでしょう。

 


しかし私は象に使われている身なのでなすすべがありません。もう聴力に頼るしかないので先生と通訳さんに口頭で聞く事にし、言われるがままにやってみることにしました。

 


「プワー!」と言いながら象の頭を触ると直進。「リヤ!」と言いながら曲がりたい方向の足で象の耳のあたりを叩くと曲がりたい方向に曲がってくれるという事がわかったので恐る恐るやってみると、なんと本当に言うことを聞いてくれるではないですか!

 


嬉しくなってしまい大声で指令を出しながら練習に励みましたが、事情を知らない人が見たら、変なハゲが象に乗りながら「プワー!」とか「リヤ!」とか「ギャー!」とか叫んでるわけですから、正気の沙汰ではなかったでしょう。

 


お次は曲芸の練習です。読んでくれてる皆様は「いや、なんで急に曲芸?」と思われたでしょうが、この時は僕も同じことを思いました。

 


とにかくスーちゃんとコンビを組んでパフォーマンスに挑戦したわけですが、今まで色んな方々とコントをやらせていただきましたが、相方が象のケースはもちろん初めてです。意思疎通はある程度できるようになったとはいえ、言葉が通じないと相手と一体どうやってパフォーマンスしたらいいんでしょうか?

 


これはもう私が猿回しならぬ象回しになって、本当の意味で象を使ってパフォーマンスをするしかありません。今まで培ってきた芸人としての経験と知識と技術をフルに使ってスーちゃんを操るしかありません!小一時間ほど練習し、どこからともなく、いつのまにか集まってきたお客さんの前でいざ本番!!

 

 

 

・・・負けました・・惨敗でした・・私をいじって笑いを取り、自らもボケたり、リアクション芸をして笑いをかっさらっていったのはスーちゃんでした。

 

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私はどうしていいかわからず、ただ立ってるだけでしたがスーちゃんが私の帽子を取ってハゲ頭を鼻で叩いたり、鼻で持ち上げて、ちゃんと痛くないように落としてくれたりとイジリまくってくれて超おいしくしてくれました!まるで一流のMCとからんでいるかのような安心感でした!スーちゃんは使われる立場どころか、立派な「人使い」だったのです・・・

 

 

 

さて、完全に立場が逆転したところで、いよいよ最終試験の時間となりました。最終試験は「象に乗って一人で園内を一周する」です。

 

 

 

万が一のため、近くに先生がついていてくれるものの、だいぶ広い園内を自力で一周はかなりの至難の技です。車の運転試験で言えば路上講習テストでしょうか?しかしこれはそんな生易しいモノではなく、車初心者がいきなりブレーキの壊れたダンプカーを運転するようなもんです。ようするに自爆です。

 


しかし、ここまできて逃げるわけにはいかないので、練習をしてきた自分とスーちゃんを信じるしかありません。

 


なんとか一人でスーちゃんに乗り、最終試験がスタート!

 

スーちゃんはゆっくりと歩き出し、私の指示に従ってちゃんと動いてくれています。いいぞ!その調子だ!!

 


5分・・10分と時が経つと同時にコースもズンズンと進み、意外と楽にクリアできるかも?と思ったその時、スーちゃんがまさかの行動に出ました。

 


スーちゃんは突然コースを外れ、森の中に進みだしたのです!私の顔に木の枝がぶつかりまくり「痛い!痛い!」と悲鳴をあげてもスーちゃんは一心不乱にその辺の草を食べながら森を進んでいきます。そのうち、ブーン、ブーンという不愉快な羽音が聞こえてきました。「こんな時にハエの群れがきやがった!ウゼェ!」と思いきや、目の前に現れたのは蜂の巣でした!

 


これはヤバい!私は蜂の巣を襲うつもりは一切ありませが、蜂側からしたら私は完全なる侵略者です。って事は、もちろん襲ってきますよね。

 


襲ってきました!2~3匹ではありますが明らかに殺意を持って私の周りを飛び回っています!とっさに近くにある枝を折り、蜂が近づけないようにブン回しまくり、同時に身を低くして防御をします。そこでやっと先生が助けにきてくれましたが、「遅えよ!」と怒ってしまいました。普段あまり怒鳴る事はないんですが、本当に怖かったのでついつい感情的になってしまい、さっきまで呑気に「プワー」とか言ってたのに怒鳴ってしまい反省です。

 


その後もスーちゃんは自由に移動し始め、私が有刺鉄線に落ちそうになってるのにかがんで草を食べたり、野良犬の群れに何故か突入して行ったり、小走りになったと思ったら急に止まって大量のフンをしたり(位置的に、この時に転落していたら顔面からフンに突っ込んでました)とやりたい放題でした。

 


極めつけは、流れの早いデカい川に入って水泳と潜水を始めた事です。ゴール間近で足の痛さも限界を迎えた(足の挟む力のみでバランスを取っているため、足の負担がデカいのです)頃くらいにスーちゃんはまたコースを外れ、川の中に入っていきました。最初は水浴びをしたり、また私に水をかけたりしてるだけでしたが、次第にスーちゃんは川の中心に向かっていきました。

 


おいおい、マジかよ・・と不安になってきましたが、ついに私の足が水に着くくらい深い場所まで行き、スーちゃんは泳ぎだしたのです!

 

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いやいやいや、これはガチでマズイです!この川は流れが早く、水深も深いので、もし流されたら一巻の終わりです!よくわからない巨大ナマズみたいのもウヨウヨいるし、噂によるとワニもいるなんて話も聞いてたので怖いなんてもんじゃありません!!

 


ロープもつかめないので、とにかく流されないようにスーちゃんの耳を必死で掴んで、ひたすら耐えます!「助けてー!」と叫んでみたものの、川の流れる音にかき消されて岸にまでこの声が届いているかわかりません!そしてスーちゃん、まさかの潜水!!

 

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非情にも、私の悲鳴は「助けてー!助けゴボゴボゴボゴボ・・」と文字通り水に沈んでいきました。

 


必死で耳を掴んではいるものの、だんだん苦しくなっていき、疲労もあり全身の力が抜けて行くのがわかりました。

 


この時、生まれて初めて明確に死というものを覚悟しました。

 


あと30秒も耐えれなそうなので、耳から手を離し、流された瞬間に私は死に向かっていくんだなと、ある意味悟ったような状態になりました。死ぬ直前には走馬灯が見えるって言いますが、そんな余裕すらありませんでした。

 


薄れゆく意識の中で、だんだん夢を見ているような感覚になっていきましたが、その夢は突然覚めました。

 


やっとスーちゃんが潜水をやめてくれました!!ギリギリでした、ギリギリで助かったのです!!!しかしまだ完全に助かったわけではないので、残る力を振り絞り再び「助けてくれー!」と叫びました!

 


しかし、返ってきたのは、先生・スタッフさん達・通訳さんの大爆笑する声でした。

 


もう一度言いますが、私がこの時点で象使いマスターだったなら、スーちゃんに「アイツらを殺れ!!」と指示していたでしょう・・

 


そしてボロボロのズブ濡れのグダグダになりまがらもなんとかゴールし、最終試験は終了!!

 


こんなボロボロになり、スーちゃんを上手く操る事もできなかったので不合格かなと思いきや、あっさりとまさかの合格!!

 

 

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これで私はめでたく象使いになることができました!!

 

 

 

先生が「この象は君の事をかなり気に入っているよ。」と言ってたので「いや、全然言うこと聞いてくれなくて大暴走してましたよ!ホントですか?」と聞くと「あれは、それだけリラックスした状態だったからで、川に入ったのも、象からしたら君と遊んでるつもりだっただけだ。」との事でした。テスト中、象が全く動かなくなる事もあるそうで、あれだけ機嫌よく象が自由に動きまわる中で一回も落ちずにゴールできたから合格だったようです。まあ、二回くらい死にかけましたけどね。

 


お別れの時が来るまで、スーちゃんは身体を寄せてきたり、鼻でちょっかい出してきたり、私の側にいてくれました。私が移動すると、デッカい身体を揺らせながら後をついてくるところとかムチャクチャかわいかったなぁ・・・帰りの車に乗り込む時も、つぶらな瞳でずっとこっちを見てて、ちょっと寂しくなってしまいました。

 


私の事をまだ覚えてくれてるかわからないけど、大量のバナナとリンゴをお土産に持っていつかまたスーちゃんに会いに行こうと思います!!

 


最後に、色んな人から「象使いってことは、もしその辺に野生の象とかいたら乗ったりできるの?」と聞かれるので、その疑問にお答えします!!

 

 

 

「乗れません!!」

 

 

 

 


タイで象使いになる方法

 


~完~