あっぱれコイズミ公式ブログ「タイのタイ冒険」

よしもと芸人の、あっぱれコイズミと申します。怪しいものではありません。猫・国内&海外旅行・ゲーム・映画・温泉巡りなどが好きです。 2015年5月からタイのバンコクに「アジア住みます芸人」として住んでいます。 ​ こちらのブログには趣味のことや旅行記やタイでの生活を書くので暇つぶしにでも読んでいただけたら嬉しいです。 よろしくお願いいたします。

さらば、勇敢なる戦士よ・・

僕は中学生のころから銭ゲバだったので、「社会勉強のため」と称し、アルバイトをすることにした。

 


しかし人見知りが激しく、普通にはできないので、知り合いが経営しているお肉屋さんでアルバイトをさせてもらう事になった。

 


僕はお肉が好きなのでやる前は「これで毎日、牛肉食べ放題だ!これからは俺様の事を吉野家と呼びたまえ!松家でも可だ!!」と思っていたが、商品になる前の牛タンのグロさに(でかいスニーカーにブツブツがついてる感じ)心が折れ、牛肉が食えなくなった。

 


やる前は「これで毎日、鶏肉食べ放題だ!これからは俺様の事をチキン野郎と呼びたまえ!!」と思っていたが、手羽先のグロさに心が折れ、鶏肉が食えなくなった。

 


やる前は「これで毎日、豚肉食べ放題だ!これからは俺様の事をメスブタと呼びたまえ!!」と思っていたが、豚足のグロさに心が折れ、豚肉が食えなくなった。

 

 

 

くやしかったので、「新鮮!和牛」と書いてある貼紙を「殺したて!和牛」に変えて怒られたりしたので、もう魚屋さんにジョブチェンジしようかと思った。

 


しかし知り合いに迷惑かけるわけにもいかないので(もう充分かけているが)頑張り、仕事もすっかり覚えてきたある日、出勤してみると店の中に見覚えのないゴリラがいた。ゴリラは一生懸命肉を切ったり、運んだりしている。「最近のゴリラはしっかりしてるな。感心、感心。」と思っていると、どうやらゴリラではないらしい。

 


店長の説明によると、彼はミックという名前で、親の仕事の都合でアメリカから日本に来ており、昨日からここで働いているらしい。

 


僕は話し掛けてみようと思ったが、若き日のアブドーラ・ザ・ブッチャーのような外見に恐れをなし、あまり彼とはかかわらないようにした。そのボブ・サップのような外見とはうらはらに、ミックは真面目に働いていた。

 


カタコトの日本語しかしゃべれないからか、ミックが口を開く事はなく、ただ黙々と仕事をこなしていた。そんな彼に僕は「六本木のノッポさん」というあだ名を心の中でつけ、観察する事にした。

 


そんなある日、僕が休憩中にゲームボーイで遊んでいると、ミックがチラチラとこちらを見ている。ミンチにされちまうのかと思ったが、どうやらそうじゃないらしい。僕は勇気をふりしぼり、「やりますか?」と聞くと、ミックはゆっくりとうなずきゲームボーイを僕から受け取ると、楽しそうにやりだした。始めて見るミックの笑顔だった。「ゲーム好き」という共通の趣味をキッカケに僕とミックは仲良くなり、普段遊ぶ事はなかったがカタコトの言葉で会話したり、休憩時間には一緒にゲームで遊び、肉を鼻の中に入れて「アイアム、イエローモンキー」と言いながら猿みたいに踊るという僕の0キロバトルレベルのボケにもミックは大笑いし、バイト終わりには一緒にご飯を食べに行ったりした。

 


そのうちにミックは僕にいろんな話をしてくれるようになった。日本にはほとんど友達がいない事。前のバイト先でちよっとした差別をうてて、日本人が嫌いになった事。将来はアメリカに帰り、ポリスマンか軍人になり大好きな母国を守りたいという事…。

 


ミックは僕よりも少し年上なだけだが、実はひとなつこく、しっかり者で正義感の強いナイスガイだった。僕とミックは人種と国境を越え、ベストフレンドになった。友達に言葉の壁なんてない。そう思える楽しい毎日だった…

 


ある日、バイト終わりでいつものように一緒にご飯を食べに行こうとするとミックの様子がおかしい。ミックは目に涙をため、鳴咽をもらしながらうつむいている。そしてア然としている僕に向かって「アメリカへ帰る事になってしまったので今日でグッバイだ。」とつぶやいた。実はアメリカに帰る事はだいぶ前から決まっていたらしいのだが、優しいミックは今日の今日までその事を言えなかったのだ。

 


突然の事すぎて状況を理解できなかったが、胸に熱いものが込み上げて来て、目が霞んできてしまった。僕は「帰るなんて言うなよ!日本にミックだけでも残れよ!!」と言ったが、ミックは顔をクシャクシャにしながら大きい体を小さくして泣いている…「僕も日本のベストフレンドであるシンと別れたくない、でも父親に迷惑かけるわけにもいかないし、僕はアメリカに帰ってやりたい事もある。悲しいけど、これは永遠のグッバイじゃない。また会えるよ。必ず。」と搾り出すような声でつぶやきくと僕の手を握り、離すと同時に走りだした。僕は泣きながらミックの好きだった猿のモノマネを、ミックが見えなくなるまで、ずっとし続けた…

 


それからというもの、ミックから半年に一度はメールが届くようになり、お互いの近況を報告しあった。それによると、ミックはポリスマンになるという夢を立派に叶え、頑張っているらしい。「今度是非アメリカに遊びに来てくれ!」と書いてある。僕もいつか夢を叶え、アメリカに行きたいなぁ…ミックに負けないように僕も頑張らなくては!それから一年、ミックからの手紙が途絶えた。「忙しいのかな?」と思い、特に気にもしていなかったが、ある日、ミックのお父さんからメールが届いた。「なんでミックのお父さんと文通しなきゃなんないんだよ。」と思いつつ手紙を読んでみた。

 


嘘だろ?なぁ、ミック。信じられないよ。あの時、永遠のグッバイじゃないって言ってたよね?こんなジョーク、僕の猿のモノマネよりも笑えないよ…また会おうって約束したじゃんかよ。なあ、約束破るなよ…バカ野郎…ミックのバカ野郎…!こんなのってねぇよ・・・・。

 

 

 

イラン戦争に志願したミックは、この世を去っていた