1・読む前に、前回の記事をよく読んでルールを把握した上でお読み下さい。
2・みなさんからいただいた単語を使っている部分は、赤文字で書いてあります。
3・長くなりそうなので、前編と後編に分けます
4・ゲームの性質上、あきらかに文章がおかしいとこがありますが、気にしないで下さい。
5・前編で出てこない単語も、後編でちゃんと全部出てきます。
それでは、「みんなで作ろう!作文〜SAKUBUN〜」ゲーム作品、「愛という名のフリースロー」をご覧下さい。
〜愛と言う名のフリースロー〜
濡れたアスファルトの匂いが漂う雨上がりの横浜中華街で、俺は泣いていた。雨はやんだものの、俺という雨雲から流れる雨は、まだやみそうにない・・・・・
わからない・・・・恋と愛の違いが・・・・・わからない・・・・・・
阿藤快と加藤あいの違いが・・・・・わからない・・・・・
悩み、苦しみ、悲しみ、天を仰ぎ続ける俺をあざ笑うかのように、一匹の黒猫が、ひょうひょうと俺の前を横切った。俺は間違いなく日本で5本の指に入るであろうサッカー選手。
グラウンドに姿を現しただけで悲鳴に近い歓声があがり、観客は俺の華麗なプレイに釘付けになる。自分で言うのもなんだが、スタープレイヤーと言っても過言ではない。
しかし、スタープレイヤーであり続けるゆえに練習、練習、また練習の毎日で私生活は地味すぎるほど地味。趣味らしい趣味と言えば松野明美のホームページを見る事ぐらいだ。
そんな俺だからスターにありがちな浮いた話も一切なく、「実はゲイ」などと噂された事もあったが、実際はちゃんと彼女がいる。結婚を前提に付き合っている、俺の愛した女が。
彼女は「京極夏彦ごっこ」が趣味のちょっと変わった女だが、アイドルとして芸能界デビューしてもおかしくないくらいの100人いたら100人が振り返るであろう美人で、才色兼備とはまさに彼女の為にある言葉だとさえ思ってしまうほどのあまりにも魅力的すぎる女。
そんな彼女との出会いは、忘れもしない4年前。俺がまだ試合にも出れない十把一絡げの存在にすぎなかった新人の時に、とある海で出会った。
当時スランプに陥っていた俺はやみくもに浜辺をランニングし、疲れたらその場ですりこぎと白チョークをガリガリかじる。という行為を繰り返し、己の未熟さを呪う毎日を過ごしていた。
そんなある日、いつものように俺がすりこぎと白チョークをガリガリかじると、どこからともなく見知らぬ女が現れ、無言で砂浜に「明太子」と書き、俺の目をじっと見つめ、そして優しく頷いた。
それが彼女との、運命の出会いだった。その日から俺と彼女はデートをかさね、一緒に時を共有し、愛という美しい花を、共に育ててきた。そんなある日、デートを終え、いつものようにつかぬまの別れを惜しみながら見つめあう2人。
しかし、この日はいつもとは違った・・果たして、どのくらいの時間見つめあったのだろうか?紅の夜に照らされる中、2人の唇が、まるで合わせ鏡を見ているかのように、同時に同じ動きをした。
「あなたが、好きです。」
と・・・・・・その日から俺は人が変わったかのようにふっきれ、どんどんと頭角を現していった。「俺はもう一人じゃないんだ。守るものができたんだ!」その気持ちを胸に抱きながら努力に努力を積み重ねた結果、俺はおしもおされぬスタープレイヤーになり、今年のワールドカップ選抜に選ばれる事になった。
嬉しさと同時に、俺はある一つの決意をした。「彼女にプロポーズをする。」という決意を。世界中が注目し、サッカー選手なら誰もが憧れる大舞台ワールドカップ。そこに俺はゴールしたのだ。ならば同時に、彼女ともゴールできたらこれほど幸せなことはない。よくばりかもしれないが、どうせなら彼女が喜ぶ演出もしてあげたい。どうやってプロポーズしたら、彼女は一番喜んでくれるんだろうか?
考えれば考えるほどわからなくなってきてしまった俺は、唯一心を許せる幼なじみの大親友、気持ち悪いパパパンダに相談する事にした。
ちょっと流行遅れのジャズが流れ、煙草の煙とコーヒーの匂いが充満する喫茶・うまさスッキリ。
まるでここだけ80年代にタイムスリップしてしまったようなこの喫茶店が俺は大好きで、考え事をする時や落ち込んだ時は必ずここに来て、コーヒー1杯とオレンジジュース197杯で何時間でも居座ってしまう、俺の大切な場所。まだぺーぺーだった俺を支えてくれたのが彼女とこの喫茶・うまさスッキリ。
そして今、目の前に座っている俺の幼なじみの大親友、気持ち悪いパパパンダだ。
コイツは気持ち悪いと言っても気持ち悪いのは八重歯が2メートルあるところくらいで、横山健と堀源起を足して2で薄めた感じの男前。しかもハートも良いナイスガイだ。コイツと仲良くなったキッカケは、俺が小学生の時にさかのぼる。
いじめられっ子だった俺がいつものようにいじめられ、泣いていると、たまたま通りかかった気持ち悪いパパパンダが小学生の悪ガキグループ5人を一人でボコボコにし、助けてくれた。
そして俺の方を振り向き、「やられてばかりで悔しくないのか!見かえしてやれ!俺は踵をかえすから!」と言うと、赤いニッポンレンタカーのジャンパーをなびかせ、踵を返して帰って行った・・・
俺はその時、生まれて始めて、他人からでっかい優しさを感じた。当時俺が11歳、気持ち悪いパパパンダが48歳の頃の話だ。
それから俺と気持ち悪いパパパンダは「幼なじみ」という設定で、今でも大親友だ。今日もニッポンレンタカーのバイトを終えて駆けつけてくれた気持ち悪いパパパンダは「あー、眠い!もう寝かせてくれ!ボジョレ・ヌーボくらい寝かせてくれ!」と言いつつも真剣に相談に乗ってくれ、いい案が2つ出た。一つ目は、俺がシュートを決めた瞬間、いつもは決めゼリフで「伊達や酔狂で被るは般若の面!」と叫ぶのだが、そこの部分を「結婚しよう!」に変えて、プロポーズをする。
二つ目は、彼女を体育館の裏に呼び出し、指輪をあげてプロポーズするかと思いきや、その指輪をメリケンサックのように指にはめ、彼女をボコボコにシバき倒し、「チャッチャラー」という音と共に赤いヘルメットを被り「ドッキリ大成功!」と書かれた看板を持った気持ち悪いパパパンダが出てくる。
というものだ。
どちらも捨てがたいので悩みに悩んだが結果、一つ目の案を採用する事になった。ゴールを必ず決めないといけないという不安要素はいなめないが、成功した時の効果はかなり大きいだろう。他にも、いつの間にか議論に参加していた気持ち悪いパパパンダの一番弟子、マンドリルから「ムーニーマンよりマミーポコなんじゃないか?」という意見も出たが、残念ながらそれは却下する事にした。その後、マンドリルの姿を見た者はいない。
それから数日後、ワールドカップ出場のためドイツへ向かう日の朝、俺は彼女の元へと向かった。大事な約束をする為に。
しかし、この時にはもう、神様のイタズラってやつは、始まっていたのかもしれない・・
〜完結編に続く〜